ヨガと瞑想の違いって何だかわかりますか? またマインドフルネスと瞑想って同じなのか違うのでしょうか? そんなことをテーマに書いてみます。
現代の世の中で一般的に行われているハタヨーガ。身体を動かす体操のヨガは広い意味ではハタヨーガになります。ハタヨーガの現存する最古の教典といわれるゴーラクシャ・シャタカでは、ヨガの区分を6つに分けて、その中で瞑想についても定義されている。
アーサナ、プラーナサンヤーマ、プラティヤーハラ、ダーラーナー、ディヤーナ、サマディ、これらがヨガの支分の6つである。 (1−4)
サンスクリット全解 ゴーラクシャ・シャタカ 翻訳・解説 菅原誠より
ハタヨーガの開祖が示す教典 ゴーラクシャ・シャタカ サンスクリット語全解について
現代の世間一般的にはヨガというと8支則のヨーガ、アシュタンガ・ヨーガで知られるが、こちらはパタンジャリのヨーガ・スートラによる定義であり、ゴーラクシャ・シャタカにはない、ヤマとニヤマが書かれているが瞑想の定義は同じである。
ヨーガスートラ 2−29
yama niyama-āsana prāṇāyāma pratyāhāra dhāraṇā dhyāna samādhayo-‘ṣṭāvaṅgāni (29)
ヤマ、ニヤマ、アーサナ、プラーナヤーマ、プラティヤーハーラ、ダーラナー、ディヤーナ、サマディが8つの支分である。 (2:29)
パタンジャリのヨーガ・スートラ
ともにダーラーナーとディヤーナがヨーガにおける瞑想であるとされている。ダーラナーとは日本語では「凝念」、「集中」などと説明されることが多い。
ヨーガスートラ 3章1節、2節
deśabandhaḥcittasya dhāraṇā (1)
(読み)デーシャバンダチッタスヤ ダーラナー
訳 心の場への結束がダーラーナーである(3:1)
サンスクリット全解 ヨーガ・スートラ「探求 クエスト」翻訳・解説 菅原誠より
ディヤーナは、「瞑想」、「禅定」、「静慮」などと訳される。
tatra pratyayaikatānatā dhyānam (2)
(読み)タトラ プラティヤヤ イカターナター ディヤーナム
訳 そこに想念を統一することがディヤーナである(3:2)
サンスクリット全解 ヨーガ・スートラ「探求 クエスト」翻訳・解説 菅原誠より
仏教では瞑想を2種類に分けていて、止観、サマタ瞑想(止)と、ヴィパッサナー瞑想(観)があります。
「止」のサマタ瞑想が、ヨーガでの「ダーラーナ―」で、「観」のヴィパッサナー瞑想が、ヨーガでの「ディヤーナ」であるといわれてます。 ヨーガはインドのヴェーダンタ哲学やヒンズー教とともに仏教の教えにも影響を受けていて、ヨーガ・スートラは仏教の教えがとことどころ入っているようなところもあり、ハタヨーガに至っては仏教密教のナータ派とヒンズーのシヴァ派から生まれたと言うため、思想や考えなどに共通する部分がいろいろあります。
日本に鎌倉時代頃に伝わった、禅はディヤーナのことで、インドから中国に伝わり「禅那」となった略が禅です。
マインドフルネス(mindfulness)は、仏教経典に出てくるサティ(sati, サンスクリット:smṛti)の英訳で、インドから中国に仏教が来て「念」という言葉が当てられた。今の心と書いて念。「瞬間、瞬間に気づき」日本語では気づき。 マインドフルネスとはアウェアネス(awareness)気づきのこと。では、「気づき」とは何だろうか? 何に気づいているのか? マインドフルネスでは何にただ観察して意識的に気づいていることを言っているようにも見えるのですが、「気づき」に気づいていることが本来のディヤーナ 瞑想であり、多くのマンドフルネスはダーラナー 「集中」の手前、ヨーガでのプラティヤーハーラ「制感」に近いようにも思います。
svaviṣayaasaṁprayoge cittasyasvarūpānukāra ivendriyāṇāṁ pratyāhāraḥ (54)
(読み)スヴァヴィシャヤーサンプラヨーゲー チッタスヴァルーパーヌカーラ イヴエーンドリヤーナーム プラティヤーハーラハ
(訳)諸感覚がそれぞれの対象と接触せず、心本来の状態の相似の如くなることがプラティヤーハーラである。
サンスクリット全解 ヨーガ・スートラ「探求 クエスト」翻訳・解説 菅原誠より
これらは、様々な意見や考えがあるでしょうが、多くの場合は瞑想が手法としてやり方になっているのではないでしょうか。マインドフルネス瞑想、ヴィパッサナー瞑想、サマタ瞑想、瞑想をやり方として捉えていることで本質から外れてしまう。
瞑想はやり方ではなく、状態を言います。
瞑想しようということから離れて、集中や観察が起きていること。 これらは特別なことではなく、日常生活で自然に何度も起きていることをヨガでは訓練によって意識的にその状態に入りやすくなっていく。瞑想状態はマインドフルネスではなく、マインドレスネスだと言う人がいたが、まさにな表現ではないだろうか。なかなか言語化するのが難しいテーマですが、今後も取り上げていきたいと思います。
ヨーガについて、色々な記事を書いていますのでよかったら読んでみてください。1
パタンジャリのヨーガ・スートラを学ぶ 1章1節 Atha アタ
パタンジャリのヨーガスートラを読む 1章5節ー6節 ヴリッティ(心の作用)
ハタヨーガの開祖が示す教典 ゴーラクシャ・シャタカ サンスクリット語全解について
ヨガのアーサナとは神様と繋がること? ヨーガ・スートラ2章46節-49節
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