ハタヨーガの開祖が示す教典 ゴーラクシャ・シャタカ サンスクリット語全解について

ヨーガ

ヨガの教典として知られるのは、パタンジャリ師のヨーガ・スートラ。

パタンジャリ師のヨーガ・スートラが、ラージャ・ヨーガの教典なら、ハタ・ヨーガの経典で知られるのは、ハタヨーガ・プラディーピカーがある。

ヨガ教典 ハタヨーガ・プラディーピカーの第1章

そしてハタヨーガの開祖と言われるナータ派の開祖ゴーラクシャ・ナータ(ゴーラクナータ)が書いたといわれるゴーラクシャ・シャタカがある。ナータ派とは、仏教タントラ(後期密教)とシヴァ教タントラから、ハタヨーガを作ったという。ハタヨーガとはタントラヨーガの流れであることがわかる。 タントラと言ってもいろいろあり、日本に伝わった真言密教やチベット仏教などもタントラの流れだったり、バリヒンズー教なんかもタントラの色合いを感じる。

ゴーラクシャ・ナータは、北インドを中心にネパールやチベットなどにも死者を生き返らせたなどの伝説があるという。 日本で言うと空海のようなイメージでしょうか? ハタヨガの開祖でありますが、ヨーガスートラのパタンジャリ師ほど著名ではないところも興味が湧いてきます。 時代は11世紀の人というのが有力ですが8世紀とか13世紀とかいう説もあり。 平安時代や鎌倉時代あたりなのに、どの時代がはっきりしていないのもインドだからなのでしょうか?とますます不思議です。

ゴーラクシャ・ナータのお師匠さんは、マツェーンドラ・ナータ師

聖者マツェンドラの名前が入ったマツェンドラーサナというアーサナもあります。 マツェンドラとは魚の王という意味。 魚がヨガを学んだことを知ったシヴァ神が、マツィエンドラと命名したという。アーサナの名前も面白い。

ゴーラクシャ・シャタカが日本語で読めるものは、少ないが菅原誠さんがサンスクリット語から解説したものが2020年三月に出版された。 

サンスクリット全解 ゴーラクシャ・シャタカ (日本語) オンデマンド (ペーパーバック)

こんな素晴らしい本が読めるなんてマジで泣きそうなくらい感動です。それはともかく、ヨギーならハタヨガと言われるものを日々やっているのなら、ゴーラクシャ・シャタカに何が書かれているのか読んで損はなし。 

シャタカ=100からなる。 約100節でハタヨーガについてまとめられている。どんなことが書かれているのか、今回は全体の流れをざっと紹介したいと思う。

 

(1)オーム。世俗の束縛からの解脱のために、人々が自我(アートマン)の覚醒(ブッダ)を成し、識別(ヴィヴェーカ)の扉への鍵たる、ゴーラクシャ・シャタカを私は語ろう。

1節ではまずは、OM(オーム)のマントラから始まり、ゴーラクシャ・シャタカがなんのために書かれているかが最初に示されている。仏陀(ブッダ)とは解脱した人、悟りを開いた人。ヨガは解脱して自由になるための修行法、ハタヨーガとは解脱のため。 健康やダイエットのためじゃない。

 

(2)意(マナス)を迷妄より離脱させ最高我(パラマートマン)へと融合させる、これぞ解脱への階梯であり、これぞ死から脱却である。

マナスとは、心、意、内的器官、パラマートマンとは最高我、宇宙精神。 わかりにくい文ですが、解説ではギーターでマナスを融合させる対象が私だったのと比較しています。

 

アーサナ、プラーナサンヤーマ、プラティヤーハラ、ダーラーナー、ディヤーナ、サマディ、これらがヨガの支分の6つである。 (1−4)

ヨガ、スートラの8支分からヤマ、ニヤマがなく6つで、プラーナヤマではなくプラーナサンヤーマとなっている。 プラーナヤーマよりより制御する意味が強いと菅原さんの本では伝えている。

5節ではアーサナは生物の数ほどあると述べていて、6節では84ラクシャ(840万)あるアーサナの中で1ラクシャ(10万)に一つ、84のアーサナが選ばれたという。7節では、その中で最上のアーサナが2つあるという。 ハタヨーガ・プラディーピカーでは4つが書かれていたが、ゴーラクシャの方が先に書かれていたので、2つ増えたことになる。

全てのアーサナのうち、特に2つが卓越し、ひとつがシッダーサナであり、ふたつめがカマラーサナである。(7)

シッダーサナ 

カマラーサナ(パドマーサナ)

アーサナの説明はこの座位二つだけですが、足の位置、目線の注視する箇所などが書かれている。 図とか絵が欲しいと思ってしまいます。

10節に入るとチャクラが出てくる。 一般的な7つのチャクラではなく、ここでは2つのチャクラがしめされている。

アーダーラ 第一

スヴァディーシュターナ 第二

この2つの中間にカーマルーパがあると言う。

チャクラの位置についての説明もありますが、正確な位置は読んで理解をするのはとても困難です。

16節に入るとナディーの話に入る。 72000のナディの源泉が臍下にあるという。いわゆる下丹田あたりと思われる。

72000のナディのうち72が重要で、さらに10が最重要であると10のナディの説明があり、その中でのイダ(月)、ピンガラ(太陽)、スシュムナー(火)の3つが頂点だという。 タイ古式マッサージでも10のナディ=センのうち10を重要と言ってる。その関連性もいずれ調べてみたい。

24節からは、生命エネルギー、氣、いわゆるプラーナが知られるが、プラーナをはじめとする10のエネルギーの話となる。

 

(25)ナーガをはじめとする5つ、プラーナをはじめとする5つの生気はよく知られ、これらは幾千のナーディーの内を流通し、生命を形作っている。

そして30節ではクンダリー(クンダリーニ)が登場する。 

32節からはムドラー、印について書かれている。

ムドラーについては、マハームドラー、ケーチャリームドラーについて説明される。

35節からはバンダについて記される。ウッディヤーナ、ジャーランダラ、ムーラバンダが説明される。

38節から53節までは、プラーナヤマについて記されている。 ハタヨーガについてプラーナヤマが重要だってことがわかります。

39説で、”ヴァータ(生気)が動揺すれば全てが動揺し、” と書かれており、アーユルヴェーダでのヴァータの異常が他のヴァータへの影響ということと同じことを示しているのではないだろうか? ヨガの哲学はいろんなものとの繋がりが考察されると面白さが増えていきます。

50節では食事について、辛味、酸味、塩味を避けて、乳を使用した食事を摂ることを勧めている。これはギーを使うことを言っているのだろうか?

54節になるとプラティヤーハーラが登場。

 

ヨーガ行者は常に、アーサナによって病気を、プラーナヤーマによって罪悪を、プラティヤーハーラによって心(マナス)の動揺を滅する (54)

太陽が月に満ちた甘露を引き込む。それを引き込むこと、それがプラティヤーハーラと呼ばれる。(55)

やたらと太陽とか月が出てくるんだが、これがプラティヤーハーラの説明としては意味不明で理解が難しい。 ハタヨーガ・プラディーピカにはプラティヤーハーラについての記載がなくハタヨガの教典として比較してみるのも面白そうです。。

60節から、再びチャクラの話に戻ります。 アナハタ、マニプーラ、ヴィシュッダについて触れています。

67節からダーラナーについて記されます。五大についてダラーナが説明される。五大とは、地、水、火、風、空の五大元素である。理解に難しいが重要であることがわかります。

76節からはディヤーナについて。ディヤーナについてでまたチャクラのことが書かれています。チャクラについて書かれていることがこの経典の特徴であるとも言えます。

そして徐々にまとめに入ってきているような言葉になりながら93節ではついにサマーディについて書かれる。

 

101)ヨーガを知る者の至高の境地においては、恐ろしき森の如き世俗において、解脱の梯子たる道により、永遠の純一性に到達するであろう。

これを読んで興味持った人はぜひ、本を購入して読んでみてください。そして、よければ感想などを聞かせて欲しい。 

内容がかなり理解が難しいですが、自分の理解をもう少し今度書きたいと思う。

・ハタヨーガ・プラディーピカーなど古典のハタヨーガの教典の比較を書いた記事もあります。

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