森と氷河と鯨 ―ワタリガラスの伝説を求めて森と氷河と鯨 星野 道夫  (著)

本のこと

本棚にどんな本が並んでいるのか? 他人の本棚に興味あります。 星野道夫さんの本が並んでいたら、言葉を交わさなくても、その人の何かにタッチしたような気持ちになるかもしれない。

何冊も持っている星野さんの本のなかでも、大好きな本のひとつが「森と氷河と鯨 ―ワタリガラスの伝説を求めて森と氷河と鯨 星野 道夫  (著)」

山よりも森よりも、いつだって海派できっとこの人生はずっと海が好きだと思うけど、星野さんの写真を見ると、一瞬にして海も山も森もその境界線は溶けて、ただ自然がここにある。

アラスカの森の写真も、森の前の鯨の写真も、何が写っているかとかそんなことより、その美しさを言葉でうまく表現できないことがもどかしくなる。 きっと言葉で表現する必要なんてないんだけど。

そう、そして写真も心を持っていくが、彼の文章も何か特別な言い回しをしているようには思えないけど、心の奥深くに優しく触れていくようで、その繊細なタッチがきっと読んだ人の深層意識へと残っていくのだろう。

この本のなかではアラスカ先住民族のボブという男との話が書かれている。 そうなんだ読んでいて、子供の頃好きで読んでいた宮澤賢治の物語を思い出す。話の内容はまるで交差するようなことはないが、近くて遠いような、そしてそのメッセージが何を伝えたいのか思考では理解できなくても、奥深くの何かに訴えて振動している。

ワタリガラスの神話、トーテムポールを作ったインディアンの家系の話、さまざまな生き物が先住民たちの社会を構成する母体になっているという。

本のなかで紹介されるエスキモーのシャーマンのメッセージ。

The only true wisdom lives far from mankind, out in the great loneliness, and can be reached only through suffering. – Caribu Eskimo ,Sharman

唯一の正しい知恵は、人類から遥か遠く離れた大いなる孤独の中に住んでおり、人は苦しみを通じてのみそこに辿り着くことができる。 ー カリブエスキモー、シャーマン ー

言葉の美しさだけでなく、何かを示唆して、教えてくれるもこともいっぱいある。 

トーテムポールは貴重なものとして、白人が持ち帰って博物館で保存する行動に対して、先住民の子孫たちは拒否して、トーテムポールはいつか朽ち果てて、そこが森になって自然の中に消えていいと考えているという。星野さんは目にみえるものに価値をおく社会と目に見えないものに価値をおくことができる社会の違いを思い、後者に惹かれるという。 物質を所有することに価値をおく社会、所有というのは幻想でしかないんだよね、お金も物も所有しているようで、いつか消えていく。永遠に保存なんてできない。 消えていき思い出だけが残るが、その思い出も人の記憶と共に変化して消えていく。 死を恐れる社会、失うことを恐る、最初から何も持っていないし、ただ変化しているだけ無常なんだよね。 美しいし儚いし、切ないし、優しいし。

グレイシーベアという青い熊を見てみたいと思っていたという。それが見れなかったことを書いている文が心を打たれました。

グレイシーベアはついに姿を現しはしなかった。それでよかった。 グレイシーベアがこの世界のどこかにいること、その気配をぼくは感じていたからだ。見ることと、理解することは違う。たとえぼくが餌付けしてグレイシーベアをおびき寄せても、それは本当に見たことにはならない。しかし、たとえ目に見えなくても、木や、岩や、風の中にグレイシーベアを感じ、それを理解することができる。あらゆることが私たちの前に引きずり出され、あらゆる神秘が壊され続けた今、見えなかったことは見えなかったことは、また深い意味を持っているのだ。博物館に美しく保存されたトーテムポールではなく、森の中に消えていったトーテムポールがより聖なる力を持つように。

目に見えたものが見えたとは言えず、目に見えなくても感じて理解すること。 旅とかでもそこに行ったから理解できるわけではなく、その土地をいかに感じるか、空気をそこにいる人を自然を、あらゆることが見える現実を基準になっている社会だけど、見えないことから大事な何かを知り、理解することになる。 こういう文章が優しく言える人でありたいと思うな。社会のことに対して拳を振り上げて戦うのではなく、本当に大事なものは何なのか、そこに繋がろうとすること。

本のなかでも好きな場面はザトウクジラの声を聴くところがあります。自分は一度だけ小笠原の父島でザトウクジラを見たことがあって、それ以来ザトウクジラが好きになって魅せられています。 この本について書き始めると書きたいことがたくさん出てきますが、今回はここまでにして、またいずれ書きたいと思います。ブログで書いている本の紹介がほとんどヨガに関することですが、まるでヨガと関係なさそうな本ですが、なんか通じていないでしょうか。

この森と氷河と鯨は雑誌に掲載していたエッセーで、14回まで続き、あと3回を予定していたが、星野さんがアラスカで熊に襲われて亡くなったため、どんな文や写真があと3回であったのか知る由はありません。それも決して見ることはできない、目に見えないけど、この本を読んだ人はきっと何かを感じとるのではないでしょうか・

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