イラストも文章もツボに入りまくってしまったヨガの本、伊藤武先生の秘伝マルマ ツボ刺激ヨーガ。古本で買ったら、ご本人の手書きのイラストとサインがついてました。
伊藤武先生の著作はどれも面白くて、豊富な知識とご自身のユニークな体験、本からお人柄が伝わってきます。そしてスピリチュアルな指導者の書く本の多くが、最高の素材を使って綺麗に調理された美しい料理だとすると、見た目は美味しいかわからないが、スパイスの味と香りが効いた絶品料理という感じがします。どっちの料理が好きかは人それぞれの好みですね。
話が「断末魔」で始まる、マルマとはサンスクリット語で、マルマを日本語では断末魔の断をとった=「末魔」、または「マーラ」、「魔羅」。どちらも無理(死ぬ)という動詞から派生していて、マーラは死神、魔羅は男性の性器をさすという。 けっこうサンスクリット語から日本語になっている言葉って多いのかな。死神マーラの別名はカーマ、愛の神だという。死神=愛の神というのが、陰陽、裏と表、世界の写鏡、インドの世界観の面白さ、本を数ページ読んだだけで吸い込まれていきます。また、マルマとは、中国医学での経穴(ツボ)とほぼ同じだといいます。 中国医学では鍼やお灸ですがインド医学、アーユルヴェーダではオイルを使ったマッサージという違いがある。
「マルマとはプラーナの座である」 ースシュムナ本集
プラーナとは、生命エネルギー、中国医学や日本では「氣」。
大きなマルマとチャクラとの関係性について。
1,肛門(グダ) ムーラダーラ
2.膀胱(バスティ) スワディーシュターナ
3.臍(ナービ) マニプーラ
4.心臓(フリダヤ) アナーハタ
5.首(ニーラー、その他脈管) ヴィシュッダ
6.眉間(スタパニー) アージャニー
7.頭頂孔(アディパティ) サハスーラ
本でマルマヨーガとして、マルマを刺激するハタヨガのポーズをいろいろ紹介されている。一番最初に紹介されているマルマヨーガのポーズについてはこちらになる。
ハタヨガのポーズは、は本来はマルマ(経絡)を刺激するものだったのではないか、その影響が残っているのがタイのヨガのルーシーダットンでは、センと呼ばれるエネルギーライン(ナディ)を刺激していきます。また陰ヨガでも主要な経絡を意識して陰のアーサナを実践します。この本で紹介されているマルマヨーガのポーズを数個ですが、紹介させていただきます。
ナービマルマ 臍(へそ)のマルマ
・臍のマルマ ナービマルマ 太陽礼拝で最初に山のポーズから背中を後屈するアーチバックのポーズのURDHVA HASTA UTTANASANA ウールドヴァ・ハスタ・ウッタナーサナ。 肝臓や腹部が刺激され血液やプラーナの循環が良くなり二日酔いに効果があるという。副腎皮質の働きに影響があり自信と活力を与える。
頚椎と頭の接点のクリカーティカーマルマは、自分の経験では、このツボを押して頭を動かすと肩こりや首の疲れに効く。中国医学の風池というツボとほぼ一致するようだ。
アーサナの意味について
アーサナの意味についての考察がめちゃ面白いです。少し抜粋します。
アーサナの語は、ふつう「座席、仏像や神像などの台座、坐法」の意味で使われ、またそのように訳されているが、「在ること」が原意です。
ここまでは一般的なアーサナの説明です。
野性の動物の偉大な力を、自分の裡(うち)に取り込むためのダンスが、まず最初にあった。このようなシャーマン・ダンスは、インド中部の山岳地帯に数多く残る太古の狩猟民が描いた岩壁画のなかにも見ることができます。
そうした魔術的なダンスが民族舞踏や武術に取り入れられ、さらに抽象化してヨーガのシステムに取り入れたものが、ヨーガの体位法なのです。
著者の考察から、○○○・アーサナと名前のつく○○○の神さまや動物、聖者の名前、その名前にまつわる神話や伝説、物語の力を身体に取り入れる、アーサナを自分以外の力と繋がる魔術的なものだったと考えていると思いました。
トリカマルマ(尾骨) コブラのポーズ
コブラのポーズ(ブジャンガアーサナ)は尾骨のトリカマルマ。このコブラはナーガ(竜)として神格化されるキングコブラでムーラダーラチャクラに眠るとされるエネルギーのクンダリニーだという。 太陽礼拝のポーズは骨盤の前傾、後傾を繰り返しながら背骨をダイナミックに動かすのだけど、そのときに4つのポイント、第一チャクラから第4チャクラまでを意識して力を入れたり抜いたりしていくのは、クンダリーエネルギーを流そうという意図なのかもしれない。
他のマルマもとても面白いです。スタナムーラマルマは乳首の下のマルマ。 ワシのポーズで知られるガルダ・アーサナは胸の位置なのでアナハタ・チャクラと関連している。シュリンガータカマルマは、脳神経のマルマ。ポーズはシンハアーサナ(獅子のポーズ)で、アージャニーチャクラと関連している。シュリンガータカとは、「4本の道の交差路、十字路」の意味だそうで、「スシュルタ本業」では、「舌と鼻と目と耳の4つの路が口蓋と出会う箇所」と説明されているという。女性の肌が綺麗になったり表情が美しくなる美貌に効果あるマルマだといいます。面白くないですか?
太陽礼拝 スーリヤ・ナマスカーラ・アーサナ
12のポーズを連続で行う太陽礼拝のポーズは、フリダヤ 心臓のマルマ。心臓にはヨガでは真我(アートマン)が住んでいるとされています。アナハタチャクラに関連。太陽礼拝のポーズはシンプルで短い時間で行えるが、さまざまな効果があり、ここでは心臓のことをメインに触れていますが、スタミナや力強さがつくといいます。
デリー国際空港に像もある太陽礼拝 Surya Namaskarの効果とやり方
マルマヨーガのポーズの他に、マルマ・マッサージについても書かれていますが、マルマを刺激するポイントがタイ古式マッサージのようにエネルギーラインを押すのではなく、やさしく刺激を与えてあげるといいます。 おそらくアーユルヴェーダのマッサージでも強く押されていなくても心地よくなっていくのと同じなのではないかな。
呼吸法の紹介というところでは「仮死の術」、臨死体験の話なんかも書かれています。 読み物として面白いと思うか怪しい話だと思うか、信用するのか、どれも自由ですね。
もし、人に呼吸がなければ、マルマもない。
気息(プラーナ)はマルマである。
マルマは瞑想によって気息が蒐(あつ)められるところである。
プラーナ 生命エネルギーをコントロールしようということがハタヨガの面白いところであると思っていて、全身に流れる気のエネルギーによって、心や思考にも影響を与える。古代のヨガ行者たちは、それを知っていた。
伊藤先生の世界観は、まるで曼荼羅で世界がさまざまな方向に展開されますが、実際に曼荼羅の話も出てきます。最後は潜在意識への植え付け、潜在意識をコントロールしていく方法を教えてくれています。
イメージトレーニングの方法として蝋燭を使ったトラータカなど紹介されていますが、著者が実際に性的な快感に見舞われた例などあり、ところどころにエロな下ネタが混じっているのも伊藤先生の話の面白いとこだと思う。 下ネタ嫌いな人は合いませんね。昔から「日本では病は気から」という言葉がありますが最後にこの一文で締めたいと思います。
病気に打ち勝つ体の知恵を速やかに導き出すのが、意識の力なのだ。
素敵な本を書いてくださってる伊藤武先生に感謝します。また別の書籍も紹介できたらと思います。