トラウマ・センシティブ・ヨーガ ヨガで心身の強い痛みをケアすること

ヨーガ

トラウマ・センシティブ・ヨーガ

ヨガをトラウマ治療に使う、トラウマ・インフォームド・ヨガ、またはトラウマ・センシティブ・ヨーガというのが欧米では行われている。

日本ではまだあまり聞きなれない言葉だと思う。

心と身体が繋がっている。

記憶は脳だけでなく身体にも記憶があるとい言われており、腸が第二の脳と言われていたりもする。

怒りの感情は肝臓にたまるので、肝臓を悪くする人は怒りをためているなんてことも言います。

 

身体と心の感覚 腹(肚)と会話してみる 

深いトラウマを抱えていなくても、多くの人は何かしら幼少期からの感情をためていたりする。

ビリーフ、観念や信念といったものがある。 自分の持っているビリーフに気づかずに人は暮らしているが、探すのは実は簡単だったりもする。

「〜をしなけれないけない。」などといった、”こうあるべき” というのは自分の中で作っているルールがあって、要するにそれがビリーフだったりする可能性だったりする。

良い悪いといった善悪のジャッジメントの裏にはビリーフが隠れている。

他にも何か新しいことを始めたいけど出来ないとか、習慣化していることをやめたいとか、変えたいけど出来ないとかもビリーフがある可能性がある。

トラウマを解消するだけでなく、ヨーガをビリーフを緩めたり、感情を解放したり、習慣化したパターンを変えたりとかにも役立つと思っていて、感情解放ヨーガクラスとかをやりたいって思っている。

 

トラウマをヨーガで克服する

トラウマ・センシティブ・ヨーガについて、1年半くらい前に読んだ”トラウマをヨーガで克服する ” 著者はデイヴィッド エマーソン と エリザベス ホッパー

翻訳の伊藤久子さんは、『インテグラル・ヨーガ パタンジャリのヨーガ・スートラ』の翻訳者でもある。

この本について、自分なりに気になった箇所を紹介したい。

1999年ごろから心拍変動(HRV)が脳の覚醒系のひとつ脳幹部に位置する健全性を測定する方法として知られるようになった。HRVが強い人は調和がとれて呼吸、心肺がリズミカルで、低い人はうつ病、心臓病、癌などあらゆる病気のリスクが高い。ヨーガがHRVを向上させる可能性があるということで、この本の著者らはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療への有効性などを評価すべくプログラムを作った。

人間の身体は肉体的な脅威に対して、戦う(ファイト)または逃げる(フライト)することで自動防御するようなプログラムがあり、これがファイト・フライト反応が挫折するとトラウマ性のもになる。

自動防御システムが反応しなくなった身体感覚は、膠着感や無力感を記憶して、自分でコントロールできずに身体が自分の敵となってしまう。

トラウマを負うことで、もっとも難しいと思われることは、内に住み着いている<引き金>(トリガー)をどうするかということである。

 

多くのトラウマサバイバーの生活は「望まない感覚経験を切り離して無効化し、その周りをぐるぐる回る」

 

現代の神経科学から得られたもっとも深い教訓のひとつは、「われわれの”自分自身”という感覚は、体の中に錨を下ろして、そこにしっかりとつなぎとめられている」ということである

 

これまでのほとんどの精神療法は、感情と思考の間を行き来する作業に焦点を当てる形をとってきた。

人間の内部感覚における変化ー体の科学的側面、内臓、顔面、喉、胴体、手足の横紋筋の収縮に刻み込まれている感情を過小評価か無視している。

体にかかった鍵を開け有効なファイト・フライト反応を取り戻し、いろいろな感情を受け容れ、内部感覚を味方につけて身体的および感覚的経験をもつことの必要性。

黙って許すことを学び、恐れていた身体感覚に好奇心を持てると統御感をえる。感情と感覚を含めた心底からの達成経験が新たな内的資源やエネルギー、有効な行動をとる力をもたらす。感情は自然に流れるものだと直感的に知り、身体が経験することによって、さらに深く経験することへの興味が開かれる。

ヨーガは総合的なヒーリングプロセスになりえると伝えている。まさに自分もそう思う。

第1章 体を取り戻す

ここではトラウマ・センシティブ・ヨーガ(トラウマに対する感受性を整えるヨーガ)について、書いている。

トーク・セラピーを超えて体をヒーリング環境に導く必要性について。「トラウマは体の中に保持されている」

”体と和解し、自分の体が再び機能し始める経験から学び、体を自分のものとして取り戻す方法”

「トラウマ・センシティブ・ヨーガを通して学んできたことが、自己受容、自己信頼へと繋がっていくことを確信している」と書いてあって、ここが大事なポイントだと思った。

第2章 トラウマティック・ストレス

第2章ではトラウマティック・ストレスに対する理解や治療法の歴史が書かれている。

過去の治療法などは、この記事では省略するが、この本での最前線の新しく現れた治療法として、アートや音楽、ダンスなどを利用して、ヒーリングのために心と体を統合することを目指していて、ヨーガもそれらとともに心と体のヒーリングを促すトラウマ療法と定義されている。

ヨーガに基づくアプローチは、自己につながる感覚を構築するために、一連のポーズと呼吸法を用いる。ヨーガの訓練をする人は、”現在にとどまる力”そして”内的経験に気づいてそれを受け入れる力”を養い、自らの体との新たな関係を育成していくことになる。

まさにマインドフルネスやセルフコンパッション、プレゼンスを体から気づいていく。

第3章 ヨーガ

第3章はヨーガについて。 ヨーガの起源や歴史、インドにおけるヒンズー教、仏教、ジャイナ教との関連やヨーガの経典パタンジャリのヨーガ・スートラなど、ヨーガの宗教的、霊的(スピリテュアル)な探求、”存在の探求”(生きるとは何か)など必要に応じて変化してきたなかで、トラウマ・センシティブ・ヨーガは宗教としてではなく現実的な存在の探求と位置付けている。

またトラウマ・センシティブ・ヨーガでは、グルの文化を排除する。ただ、それらを実践者が選ぶことを否定はしていない。あくまでトラウマ・サバイバーにとって何が有用かを優先している。

いわば古典的なサマディ(三昧)を目指すラージャ・ヨーガなどのヨーガではなく、現実世界で生きる上で日常を生きやすくするためのヨーガと言える。

自分の個人的な意見ではヨガを学ぶならヨガ哲学は必須だと思うが、そもそも日常生活がトラウマで成り立たないのであれば、まずはそれを取り戻すことが大事だとは思う。

ヴィンヤサ、パワー、アイアンガー、ピクラムなどの人気のヨーガがトラウマサバイバーにとっても有効だと言えず、不快になる可能性からトラウマサバイバー向けのヨーガを作る必要性を伝えている。

第4章 トラウマ・センシティブ・ヨーガ

ヨーガが効果をうむために、「体が問題となっている人に、いかに体ベースの活動にアクセスするのか」という難問がここで書かれていて、ようやく本題。

トラウマ・センシティブ・ヨーガの4つのテーマを大切なものとして掲げている。

「今この瞬間を経験すること」

「選択すること」

「有効な行動をとること」

「リズムをつくること」

これらの4つは、ヨーガやマインドフルネスが確かに有効的だと思う。

第5章 トラウマを抱える皆さんへ

この本、日本でトラウマを抱えている人たちが手にとって読まれているのかきになるところだが、トラウマを抱えた人がトラウマ・センシティブ・ヨーガに興味を持ったときのフィードバックや質問につて、書かれている。

平均的なヨーガクラスでは、トラウマの引き金を引く可能性があり、ヨーガの先生への質問についてや、試しに家でやって見るための簡単なプラクティスも紹介されている。

第6章 医療者・心理セラピストの皆さんへ

ヨーガベースのセラピーを取り入れるための方法が書かれている。

ここではファシリテーターにヨーガの経験があると望ましいと書かれていて、当たり前だが、ヨガを教えるならヨガを実践している人であること。自分がヨギーであること。

ポーズでのインストラクションなどについても書かれている。ここまで読んできて、セラピーに導入するにはヨーガのインストラクターの経験か、教えていなくてもそれなりの経験が必要ではと思った。身体を使ってアーサナだけでなくマインドフルネス瞑想などのメディテーションの経験も必要ではないだろうか。

呼吸法と感情調整について強力な道具であるが、本の中でも

”ヨーガの考え方によると、呼吸法(プラーナヤマ)をするのはかなり上級に進んでからで、ここには多くの訓戒がついてくる。われわれは呼吸技術に関してはかなり慎重であり、生徒たちには、ほとんどの呼吸プラクティスを資格のある教師の下で試みるように勧めている。”

呼吸法には、潜在意識を変えたりすると言われるような強力なものもあるが、セラピストがまず実践と理解が必要だと思う。

引き金(トリガー)を排除するのでなく、向き合えるように安全な場所を提供することも伝えている。

 

第7章 ヨーガ教師のみなさんへ

ヨーガクラスをトラウマ・センシティブ・ヨーガのクラスに変えていくことについて。

必要な5つの領域を示す。「言葉」、「支え」、「教師の資質」、「環境」、「エクササイズ」

言葉について、優しく、けれどはっきりと注意を内的経験に向かわせるようにすること。使う言葉は2種類で探求の言葉と促進の言葉

探求の言葉のキーワードは、気づく、知ろうとする、興味を持ってアプローチする、許容する、試す、感じる、その他これらに関すること。正しいとか間違っていると判断しない。

その他についてはここでは書かないが、通常のヨーガのクラスにおいても、トラウマを抱えた生徒がいる可能性はあり、ヨーガの先生が知っておいていい知識だと思う。

引き金は引かれるだろう、そこであなたが提供するのはヨーガのプラクティスである

 

ヨーガの先生、インストラクターにこの本オススメしたい。

最後にまとめ

ヨーガと出会って心が元気になったという人もいっぱいいると思う。

ヨーガをやれば元気になるはずって思うが、引き金(トリガー)が引かれる可能性はある。 それでもこの古代から様々な方法で伝わるヨーガは西洋に渡り、世界中で愛され、いろんな人の必要に変化をして心と身体の癒しや解放に繋がっている。

解脱、悟り、サマディといった探求をする人は少数で、心身の健康、ウェルビーングを求める人がほとんどだろうが、多くの人が心に何かしらの痛みを持っていたりもする。

トラウマ・センシティブ・ヨーガはヨーガの多様な可能性の中のひとつの側面だろうが、ヨーガのもつ可能性の大きさも感じます。

いずれ日本にもトラウマ・インフォームド・ヨガのクラスが入ってくると思う。

本の内容がとても興味深くて紹介したいことがいっぱいだったので、ぜひ購入して手に持って読んでみてください。

追記:2023年4月 トラウマを解決することがヨーガの目的ではないが、ヨーガをプラクティスすることでトラウマが結果的に癒やされていくことはあると思います。ヨガの実践はヒーリングやセラピー効果が高いため、多くの人がヨガの哲学とか知らなくてもヨガを練習するのだと思う。 セラピー的な効果が高いヨガとして陰ヨガもおすすめできます。 クラスも開催しているのでチェックしてみてください。

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