アイアンガーヨガで知られるB•K・Sアイアンガーによるプラーナヤーマの本。
監訳が日本のヨガにヨガを広めた沖正弘先生「ヨガ呼吸 瞑想百科 プラーナによる心身バランス回復」
プラーナヤーマについて良い本ないかなって思ってたところ、古本で見つけて2019年頃に購入したのだけど日本語の発行は2004年12月なので20年近く前の本になる。古いから良い、新しいから良いではないのが、ヨガの世界。
ヨガ呼吸 瞑想百科というだけあって、呼吸に関することがこれでもかって書かれていて、これは一家に一冊必須なヨガ本だなと思ったが、ボリュームが半端ないので読むのが大変です。
写真もいっぱいありますが、ヨガの本の多くが、きれいな女性が使われているがアイアンガー師自らがモデルになっている白黒の写真で、ヨガを実践している人むけの本という雰囲気が漂っている。
本の最初、4ページから猿族の王ハヌマーンに。賢者パタンジャリに。と2人の聖者への祈り、感謝の言葉から始まる。
グレゴール・メーレのヨーガスートラ本で紹介していたヴィヤーサのパタンジャリを賞賛する言葉と翻訳が違うだけで多分、同じです。
この書について、アイアンガーの師匠である現代ヨガの父と呼ばれる、T・クリシュナマチャリアの賞賛がのっていること。アイアンガー先生は、T・クリシュナマチャリアの弟子と言われているが、実際に指導を受けたのは数週間だけだったとどこかで読んだ記憶があります。 思い出したらまたどこかで書きますね。
サンキャは、すべての創造物は25の本質的な要素(タットヴァ)によって創られるとし、創造主(イーシュヴァラ)を認めていない。ヨガは創造主を認めている。
24ページの7
ヴェーダのヨガ学派、パタンジャリのヨーガスートラの思想について、説明が丁寧にされている。 アイアンガー師はヨーガスートラの8支を原則としていることがわかります。
ヴェーダーンタ(ヴェダンタ)の影響も受けているようでコーシャ(身体の相)のの概念として書かれており、身体にはブラフマンが住んでいるともいう。決してヨーガスートラの思想だけではないのかもしれない。
プラーナの話にすすまず哲学の話になりそうなので、本のプラーナーヤーマの定義を。
プラーナーヤーマは意識的に、息を吸う(吸気)、息を止める(クムバカ)、息を吐く(呼息)の時間を伸ばすことである。吸気は宇宙エネルギーを受け取る行為であり、クムバカはそのエネルギーを活性化することであり、呼気はすべての思考と感情が空になることである。
36ページ プラーナーヤーマ
呼吸が心と繋がっていることを話されていますね。
プラーナは宇宙のあらゆるところに充填しているエネルギーである。それは、物理的、頭脳的、精神的、知的エネルギーであり、宇宙エネルギーである。すべての震動エネルギーはプラーナである。熱、光、重力、磁気、電気もプラーナである。プラーナはすべてのものに含まれ、潜在しているエネルギーであり、危険なときに最高に放出される。プラーナはすべての動きの前にまず動く。プラーナは創造し、保護し、破壊するエネルギーである。活力、力、生命力、生活、精神それらはすべてプラーナである。
39ページ 3プラーナとプラーナーヤーマ
伝えるのに苦労しているのが伝わってきます。 誠実な人なんだろうなあと想像してしまいます。こうやって想像するエネルギーもプラーナってことですね。
身体のなかで活動するプラーナ、生命エネルギーは5種類あるといいます。
プラーナ、アパーナ、サマーナ、ウダーナ、ヴィヤーナ。 覚えにくい名前だといつも思います。
それぞれの役割について
・プラーナ 胸部、呼吸をコントロール 吸気により活動
・アパーナ 下腹部、尿、精液、排泄物をコントロール 呼気により活動
・サマーナ 胃、消化、腹部臓器の調和、
・ウダーナ 咽喉部全体、声帯、空気、食物の取り入れをコントロール エネルギーを脊椎下部から頭部に上昇させる
・ヴィヤーナ 食物、呼吸からエネルギーを引き出し、動脈、血液、神経組織、身体全体へ分配 エネルギーを転化する媒体的役割
ウパプラーナという補助的なプラーナがあるということで、ナーガ、クールマ、クリガラ、デヴァダッタ、ダナンジャヤと5つあるそうなんだけど、ダナンジャヤはときとして死体を膨らませたりするってサラって書いてあったりする。 死体を膨らませるってどういう意味だろう?
チッタ(心および意識)とプラーナはいつも協力している。チッタのあるところはプラーナが集まる。チッタはふたつの強い力で動いている乗物で、ふたつの力とはプラーナとヴァーサナー(欲望)である。車は力のある方にひっぱられる。
41ページ チッタとプラーナ
心とプラーナは影響している。 欲望もプラーナの動きではないのだろうかという疑問があります。どなたかご意見あればご教授お願いしたいです。
プラーナヤーマの説明に「ハタヨガ・プラティピカー」、「シヴァ・サンヒター」といったハタヨガの教典を引用しています。ハタヨガとヨーガスートラの関係性、ヴェーダのなかでの異なる思想、タントリズムをもとにしているハタヨガとサンキーヤベースのヨーガスートラ。 異なる修行法をチャンプルしたのが現代のハタヨガではないだろうか。
シヴァ・サンヒターからプラーナーヤーマの4つの段階に分類されている。
1、初めの状態(アーランパワスター)
2、熱心な状態(ガタ)
3、熟知の状態(パリチャヤ)
4、完了の状態(ニスパッティ)
呼吸の仕方も4つに分類
a 鎖骨呼吸
b 肋骨呼吸
c 横隔膜呼吸
d 全体呼吸 完全呼吸と呼ばれるこの呼吸法をプラーナーヤーマという。
呼吸での筋肉や横隔膜の動きについて、図と文章で説明してくれていて、詳細書いてあるのだけど読みにくいです。
ナディとチャクラについて、クンダリーニついて、タントラの教典からの説明もあります。主なチャクラは11あると紹介していて、最も大切なのはここでも7つでした。
食べ物について、何を食べたらいいかなどを教典を複数の引用されて説明されているが、面白いと思ったのが性格が食べ物で影響される話。食べ物で性格が影響を受けるが、食べる人によって影響を受けるか変わるという。 心が混乱して食べると、良いものでも悪くなり、仏陀のような人なら良くないと言われるものでも影響を受けないという。 大切なのは心の状態だが、ヨガ実践者はサットヴィックなのを食べることを推奨している。
プラーナーヤーマの効果として内臓の健康について細かく説明があり、肝臓、腎臓、腸、脾臓などへの効果。ナディの浄化、生命力の向上、感覚、記憶力、知識の向上、欲望や感情を鎮めるなど。
効果について、自分の好きな表現があったので紹介します。
昇りくる太陽がゆっくりと夜の暗闇を照らすように、プラーナーヤーマは心身の不純物を取り除き、求道者を洗練し、精神集中(ダーラナー)と冥想(ディヤーナ)ができる状態に導く。
96ページ 効果 18
プラーナーヤーマをするにあたっての心構えや、場所、時間、姿勢(座り方)など様々な知恵をシェアしてくれている。場所について虫のいない静かなところを選ぶようになど、細かいこともあったりします。
座り方、要するにアーサナは写真付き。合足のポーズってバッタコナアーサナというのかと知る。
人間の身体は、空気がへびのようにしのびこんだり出ていったりする穴である。心は呼吸を誘発してコントロールするへび使いにあたる。
108ページ プラーナヤーマの基本 10コツと注意 25
心をへび使いと例えているのが、好きですが、そういえばヨガの世界って蛇が例え話によく出てくるような気がします。 なぜなんだろうか? 何か理由があるのでしょうか。
ムドラーやバンダについても書かれています。ここではムドラーは、「ムッドラー」。
実践については、さらに多くのことが書かれている。 様々なプラーナーヤーマの実践方法、一般的に知られるカパラバティやナーディーショーダナなどは、もちろんこの本で初めて知るものなどもありました。呼吸・冥想百科というタイトルですが、瞑想についてはそれほどページを使っておらず、もっと詳しいものはいっぱいあるでしょう。 この本でもっとも面白いと思ったのは、シャヴァーサナについてめちゃ詳しく書かれていることです。シャヴァーサナってヨガクラスの最後にインストラクターがガイドして数分行うものというのが現代では一般的、ここではやり方や状態などが詳しく説明されている。 こんなのなかなかない。 シャヴァーサナ専門のヨガの本とかないかな? あってもよほどのヨガマニアしか読まなそうですが。
シャヴァアーサナがうまく行われているときの呼吸は、真珠のネックレスのようである。ここでいう真珠とは、ゆっくり、一定の速度でうやうやしく動く肋骨のことである。うやうやしくといったのは、シャヴァアーサナが正確に行われている状態のときには、身体と呼吸と心と思考とが、真の自己(アートマン)に近づくからである。これはクモが自らの巣の中心に戻っていく状態にたとえられる。
332ページ シャヴァアーサナ 3
もっと紹介したいところも、いっぱいありますが、今回はここまでとします。 本の最後には用語の解説も掲載されています。 本自体古いですが、ちょっと辞典ぽくもありヨギーには役立つ一冊で持っておくとたまに読み直す本となることでしょう。